給与と労働基準法

愛知県、三重県、岐阜県及び名古屋市内の給与計算を代行します。
給与の支給項目のうち、時間外手当等の計算方法は、労働基準法と深い関係があります。

協定届(三六協定)

労働基準法は、
◎週40時間、1日8時間を法廷労働時間とし、それ以上の時間を労働させることを禁止しています。
◎又一週間に1回(変形週休制では4週間に4回)の休日を保障し、法定休日の休日労働を禁止しています。

◎時間外労働・休日労働をするには、36協定を結び、所轄労働基準監督署長へ、『時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定)』の届出た場合、その協定の範囲内で時間外労働又は休日労働が可能となります。

割増賃金の計算

割増賃金の計算の仕方は労働基準法で定められています。
時間外勤務手当を計算する際に使用する割増率は、残業の種類によって異なり3種類あります。

割増し賃金(1時間あたりの)単価

1時間あたりの単価計算しておきます。
時給制の場合

時給制であれば、その時給単価そのものです。

日給制の場合には

日給制の場合には、一日の給与を一日の所定労働時間数で割って求めます。

月給制の場合

月給制を採用している場合は少し複雑で、1が月の給与を1ヶ月の所定労働時間数で割って計算します。
1ヶ月の所定労働時間数は、通常毎月異なります。 そこで1年間を平均した1ヶ月の所定労働時間数を用います。 1年間を平均した1ヶ月の所定労働時間は、次のように計算します。

1. 1年間の労働日数を求めます。

1年間の暦日数365日から1年間の休日合計日数を差し引いて、1年間の労働日数を求めます。( 1年間の労働日数 1年間の労働日数=1年間の暦日数365日−1年間の休日合計日数) 1年間の休日合計日数は会社によって異なりますので、年末年始休み、夏期休日、祝祭日、土曜日曜など、実際に会社が休日する日を数えてください。

2. 年間の所定労働時間数を求めます。

この1年間の労働日数に、1日7時間とか8時間といった会社の1日の所定労働時間数を掛けて、年間の所定労働時間数を求めます。(年間の所定労働時間数を求めます。)

3. 1か月の所定労働時間数を計算

2)のこれを12ヶ月で割って、年平均1ヶ月の所定労働時間数を求めます。
(これがいわゆる月平均所定労働時間です)
具体例

1日8時間
年間休日数 110日
365日−110日=255日
255日×8時間=2,040時間
2,040時間÷12ヶ月=170時間(これが1ヶ月の所定労働時間数)

月額給与額とは
月額給与額とは、時間外賃金手当の計算の基礎となる1か月あたりの給与のことです。
基本給だけでなく諸手当も含まれます。ただし次のものは除外してよいことになっています。
月額給与額から除外してもよいもの
* 家族手当
* 別居手当
* 通勤手当
* 子女教育手当
* 住宅手当
* 臨時に支払われる賃金(退職手当、出産手当など)
* 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
※なお、名称で判断するのではなく、実態で判断することになります。
なお、これらの諸手当に該当するかどうかは、その名称ではなく、その目的などの実態によって判定します。
例えば、家族手当は、扶養家族数に応じて支給される手当をいうので、家族手当という名称で支給していても、扶養家族数に関係なく一律に決められているものは、 割増賃金の計算の対象となる給与に該当します。
また、通勤手当は、通勤距離や通勤にかかる費用に基づいて支給されるものをいうので、通勤距離等にかかわらず一率に決められたものは、割増賃金の計算の対象となる給与に該当します。

残業等の割増賃金

時間外労働(残業)

残業(時間外労働といいます。)の手当の計算は次のように行います。
時間外労働手当 =1時間当たりの賃金×割増率 =月額給与額÷月平均所定労働時間×割増率
* 法定労働時間は、1日8時間、1週間40時間です。
超えた労働時間については、25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
1時間あたりの単価が3,000円の場合 時間外手当の1時間あたりの単価は3,000円×1.25=3,750円以上でなければなりません。
* 所定労働時間(会社が就業規則などで定めた労働時間)が法定労働時間(1日8時間)を超えないのであれば、 法定労働時間を超えない部分については割増賃金を支払う必要はありません。
就業規則で1日7時間労働となっている場合に、10時間労働したとき 労働基準法上は、8時間を越える2時間分が割増賃金の対象となります。 もちろん3時間分について割増賃金を支払っても構いません。

休日労働(休日勤務)

* 法定休日は、1週間に1日または4週間に4日の休日となっています。
法定休日に労働させた場合には休日労働手当として、35%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
* 完全週休2日制の場合には、会社の定めた休日に労働させたとしても、法定休日外であれば、就業規則などで定めがある場合を除いて、割増賃金を支払う必要はありません。
ただし1週40時間労働を超える範囲の時間となる場合は、法定時間外労働としての割増賃金が必要となります。
就業規則で土曜・日曜が休日となっている場合 土曜・日曜の2日とも労働しても、労働基準法上は、法定休日としての1日分のみ休日勤務手当を支払えばよいことになります。 もちろん2日分について休日勤務手当を支払っても構いません。 就業規則で土曜・日曜が休日となっていて、土曜だけ働いた場合 労働基準法上は、休日勤務手当を支払う対象ではありません。しかし、労働時間が1週間で40時間を越える場合は、時間外手当を支給しなければなりません。

深夜労働(深夜勤務)

* 深夜勤務とは、午後10時から午前5時までの間の労働を指します。
* 深夜勤務手当として25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
* 休日に8時間を越えて労働させても、それが深夜の時間帯に及ばない限り、25%以上の割増賃金を払えばよいとされています。
・時間外労働と深夜勤務が重複した場合
労働基準法上は、時間外労働の25%以上+深夜勤務25%以上=50%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
・休日出勤と深夜勤務が重複した場合
労働基準法上は、休日出勤の35%以上+深夜勤務25%以上=60%以上の割増賃金を支払わなければなりません。

労働時間と割増賃金の端数処理

労使協定による控除

法定控除

社会保険料、所得税及び住民税は、給与を支給する際に必ず控除しなければならない。

労使協定控除

法定控除のほかに労使協定による控除があります。
社宅・寮費、親睦会費、財形貯蓄などを控除する場合 社宅・寮費、親睦会費、財形貯蓄など・・・会社が勝手に給与から控除することができない。
会社と従業員の代表者があらかじめ協定を結んでおかなければならない。(労働基準法に定められている。) 協定内容は書面にしておく必要があります。
従業員の代表とは

従業員の過半数を組織する労働組合があるときはその労働組合、 そのような労働組合がないときは従業員の過半数を代表する人
参考 就業規則には次のように記載しておくと良い。
第○条 給与から社会保険料、所得税、住民税及び従業員代表との協定により書面で定めたものを控除する。

支払方法

賃金の支払方法について、5つの原則が定められています。
1. 通貨払いの原則

賃金は通貨で支払わなければならない。
【例外】労働協約に別段の定めがある場合

2. 直接払いの原則

賃金は直接労働者に支払わなければならない。
【例外】労働者の家族等に支払うのはOK

3. 全額支払いの原則

賃金はその全額を支払わなければならない。
【例外】次の場合は賃金の一部を控除して支払うことができる。
* 法令に別段の定めがある場合……給与所得の源泉徴収、社会保険料の控除
* 労使協定がある場合……社宅等の家賃、社内預金

4. 毎月1回以上支払いの原則

賃金は毎月1回以上支払わなければならない。
【例外】臨時に支払われる賃金(退職手当など)、賞与

5. 一定期日支払いの原則

賃金は毎月一定期日に支払わなければならない。
【例】「月末払い」「25日払い」は○ 「毎月第2土曜日」とするのは違反
【例外】臨時に支払われる賃金(退職手当など)、賞与

給与の締め日と支払日

給与の支給方法には、日給制、月給制、年俸制とありますが、ここでは一般的な月給制を前提とします。
月給制 月給制の場合、給与の締め日(計算期間)と支払日を確認しましょう。
毎月20日締め、当月25日払い 4月21日から5月20日までの給与を5月25日に支払う 毎月末日締め、当月25日払い 4月1日から4月30日までの給与を4月25日に支払い、4月分の時間外手当等は5月に支払う この場合、5月に支払う給与は、計算期間に関わらず5月分として処理される点に注意しましょう。

給与と最低賃金法

最低賃金は地域別、産業別に定められています。手当、賞与などは含まれず、日給、月給であっても時間給換算で判断します。

地域別最低賃金は毎年10月ごろ、産業別最低賃金については毎年10月から2月に改定されますので、定期的に労働基準監督署、各都道府県の労働局などに確認が必要です。

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